1社ですべてを回している会社はありません。1本のAV作品は、資金を出して権利を持つメーカー、撮影する制作側、女優を出して管理するプロダクション、原盤を審査する審査団体、そして販売する小売を通っていきます。これは5つの別々の事業体であり、5つの別々な利害です。この業界についての誤解の多くは、それらを1つに潰してしまうところから生まれます。
この構造は、カタログの全体像が外から測りにくい理由も説明してくれます。作品数、女優数、制作本数を数えようとする人にとって、これは直接に効いてくる話です。
1本の作品には実際に誰が関わっているのか?
多くて6つの役割で、6社が別々ということも珍しくありません。それぞれが完成品に対して別々の決定権を持っています。
| 役割 | よく使われる呼び方 | 何を決めるか | 何を持っているか |
|---|---|---|---|
| メーカー | メーカー | 企画に資金を出すか、いくらかけるか、どの品番を付けるか | 原盤と作品の権利 |
| レーベル | レーベル | 編集上の個性、ジャンル、アートディレクション | 単独では何も持たない —— メーカーのブランド |
| 制作会社 | 制作会社 | スタッフ、ロケーション、撮影スケジュール | ふつうは何も持たない。請負の仕事 |
| プロダクション | プロダクション/事務所 | 女優がどの話を受けるか、出演の条件 | マネジメント契約 |
| 審査団体 | 審査団体 | 原盤が審査基準を満たしているか | 出荷を可能にする承認 |
| 配信・販売サイト | 配信・販売サイト | 何を掲載し、いくらで、どう売り出すか | 顧客との関係 |
商品ページを見ると、いちばん目立つのはたいていレーベル名で、メーカーはメタデータのどこかにあり、誰が実際に撮ったのかはまったく書かれていません。制作会社は、その業界の商品を物理的に作っている当事者でありながら、いちばん見えない存在です。
メーカーとレーベルの違いは何か?
メーカーは会社で、レーベルはその会社が運営するブランドです。1つのメーカーがふつう複数のレーベルを抱えていて、それぞれ別のジャンルや客層に向いています。
この区別が見落とされやすいのは、レーベルが独立したスタジオであるかのように売り出されるからです。ロゴも、絵づくりの方向も、リリースの周期も別々です。構造としては、出版でいうインプリント(叢書ブランド)に近いものです。資本も、契約も、法的な責任も、メーカーの側にあります。
これは業界を目録化しようとする人にとって実務的な帰結を持ちます。レーベルを数えると独立した事業者の数をかなり多く見積もることになりますし、「競合する」2つのレーベルが、同じ会社が2つの層に向けて出しているものだということも頻繁にあります。
稼働中のメーカーが何社あるかについては、数字を出しません。そんな数字が存在しないからです。業界団体も審査団体も会員一覧や会員数を公表しておらず、政府統計もこの母集団を測っていません。よく引かれる警察の届出の統計は、アダルト映像を送信する営業の届出数を数えたもので、制作会社とは別の、はるかに広い集合です。「AVのスタジオが何社ある」という具体的な数字を見かけたら、それは誰かが立てた推計であって、公表された計数ではありません。
2026-08-03に、業界団体・審査団体自身のサイトと日本の政府統計の公表資料に当たって確認しました。
品番を見れば作品の権利者が分かるのはなぜか?
品番を発行するのがメーカーであり、その英字の接頭辞が発行元のレーベルを示しているからです。品番は、この業界が持っているもののなかで主キーにいちばん近い存在です。
品番は接頭辞と連番に分かれます。接頭辞はレーベルに対応し、レーベルはメーカーに対応します。番号はそのレーベルの通し番号です。人がタイトルではなく品番で検索するのはこのためです。タイトルは宣伝用の文言で、地域やプラットフォームによって変わりますが、品番は一度発行されたら、どこに現れてもその作品に付いたままです。
品番が権利のしるしになるのも同じ理由です。2つの掲載が同じ品番を持っているなら、それがどのプラットフォームにあろうと、サムネイルがどう見えようと、説明文が何語で書かれていようと、元になっている作品は同じものです。
プロダクションは女優のために実際に何をしているのか?
マネジメントの関係を担っています。メーカーからの話を受け、条件を交渉し、仕事の日程を組み、リリースに伴う宣伝上の義務を捌きます。
プロダクションは女優とすべてのメーカーのあいだに立っています。この業界でキャリアがどう動くかを理解するうえで、これがいちばん重要な構造上の事実です。女優は、他の業界の専属俳優のように1つのスタジオとの関係を築いていくわけではありません。築くのはプロダクションとの関係で、そのプロダクションが各メーカーと持っている関係が、どんな仕事が来るかを決めます。
この仲介という位置は、ここ数年の契約をめぐる論点が集中してきた場所でもあります。プロダクションは女優に何を約束させられるのか、事前の告知や拒否の権利はどうなっているのか、それらはどう文書化されるのか。これらのルールは実質的に変わりました。詳しくは同意と契約で扱っています。
専属女優と単体女優の違いは何か?
専属は決まった期間1つのメーカーと契約し、そのメーカーの作品にだけ出演します。単体女優は作品ごとに出演が決まり、同じ年のうちに複数のメーカーの作品に出ることができます。
この2つの道筋は、運用のほぼすべての面で違います。
| 専属 | 単体 | |
|---|---|---|
| 契約の相手 | 1つのメーカーと、期間を定めて | その作品ごと |
| リリースの周期 | 定期的で、前もって計画される | 不規則で、需要しだい |
| 宣伝 | メーカーが費用を持つ企画、ジャケットに大きく載る | 最小限。複数名の並列表記が多い |
| 年あたりの本数 | 設計として少ない | ずっと多くなりうる |
| キャリアの見え方 | 高い —— 名前がブランドになる | 低く、追いかけにくい |
この非対称は、業界のどんな統計を読むときにも効いてきます。本数の少ない専属のほうが、本数の多い単体女優よりはるかに目立っていることがありえます。つまり本数と露出は別のものを測っていて、両者の相関は弱いということです。
全員がどちらかの道筋にきれいに収まるわけでもありません。主演として名前が出るのに、専属の期間契約ではなく作品ごとに出演が決まる、という中間の形があります。これがかなり多いので、市場をきれいな二分法として扱うと、相当な部分を取り違えることになります。
業界自身の言葉では、これらの層は単体(名前の出る主演1人を軸に作られた作品)、企画(コンセプトを軸にしたもの)、企画単体(その中間)と呼ばれ、専属契約はそれとは別に専属という語で示されます。これらは公表された標準で定義されたものではなく、カタログと業界の慣用語です。使われ方は単体と企画の違いで整理しています。
お金は実際にどこにあるのか?
メーカーと配信・販売サイトです。メーカーは制作費を負い、資産を所有します。プラットフォームは顧客と価格、そして売り場を握っています。
そうなると、制作会社には請負の利幅が、プロダクションには出演料の取り分が残ります。この経済の向きは知っておく価値があります。カタログを持つ者と店頭を持つ者が継続的な収益を取り、それ以外はすべて仕事ごとの支払いになる、ということです。配信はこれを強めました。1回売って終わりのものより、稼ぎ続けるカタログのほうがはるかに価値が高いからです。この移り変わりはVHSから配信へでたどっています。
この構造が外から測りにくいのはなぜか?
どの当事者も完全な数字を公表していないうえに、外部からいちばん見えている層 —— アグリゲーターや配信サイト —— が映しているのは、制作されたものではなく、アップロードされ宣伝されたものだからです。
私たち自身がこれにぶつかっています。この索引には241,792件の顔があり、そのうち2,333件が106サイトにまたがって名前のある女優に結びついています(自社索引、2026-08時点のスナップショット)。画像がどこから来ているかを見るまでは、これは業界を網羅しているように見えます。実際には、その2,333件のうち2,246件の代表画像が単一のサイトに由来していて、106サイトのうち日本の品番を扱っているのはごく一部にすぎません。
つまり、こうした索引が測っているのはアグリゲーター上の露出であって、メーカーごとのリリース本数ではありません。この2つの数字は大きく食い違いえます。大きなカタログを持っていてもアグリゲーターでの露出が乏しいメーカーは小さく見えますし、広く出回った作品は予算に関係なく重要に見えます。アグリゲーターのデータをもとにメーカーの制作量を語る主張は、いま説明した構造のなかで、測るべきでない層を測っています。